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高度情報処理技術者を目指す学士力の育成

文部科学省「大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラム」に本学情報科学部の取り組みが採択されました。

申請件数は441機関649件、採択件数は95機関96件でした。

  • 取組名称: 「高度情報処理技術者を目指す学士力の育成」(取組担当者:情報科学部・教授・花泉弘)

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高度情報処理技術者を目指す学士力の育成リーフレット

取組の概要

大学生の学力低下が懸念されている一方で、これからの情報社会を担っていく情報処理技術者は慢性的に人手不足だといわれている。21世紀の社会においては、単なるプログラマやSEではない「高度情報処理技術者」を育成していかなければならない。本取組では、その人材に求められる専門基礎能力と、自主性・コミュニケーション力の育成を目指す。情報科学分野では、産学協同でカリキュラム標準が制定されているが、本学部では学部開設以来、情報処理学会で制定されたJ97に準拠したカリキュラムを実施してきた。さらに、そのカリキュラムを補強すべく初年次にプログラミングの講義を8単位配置し基礎スキルを強化することで一定の成果をあげてきた。しかし、IT分野の発展は極めて速いため、これに対応できる「高度情報処理技術者」を安定的に育成していくには、カリキュラムだけでなくそれを補完する仕組みが必要になってくる。

2008年にJ07のドラフトが発表されたが、J07は「知識体系」という位置づけであり、カリキュラムを含めた教育実践は各大学に任せられている。J07に基づいたカリキュラムはまだ実施されていないが、本取組では、他大学に先駆けてJ07に基づいて高度情報処理技術者を育成するためのカリキュラムと、それを補完するしくみをあわせて提案する。

取組を実施するにあたっての背景

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1. 情報系学科卒業生による指導的役割

情報系学科卒業生はIT人材市場において、指導的役割を果たさなければならない。

なぜなら、当該分野の業務従事者が70万人であるのに対し、情報系学科の卒業生は多く見積もっても年あたり1万5千人と教育された人材の割合が非常に低い分野だからである。

2. 情報処理技術者への産業界からの要求

情報処理技術者が産業界から要求される知識・スキルは、技術の進歩・多様化につれ、今後も単調に増加する。

したがって、カリキュラムや指導では、効率化が欠かせない。そのためには、これまで広く行われてきたものと同様な積み上げ式カリキュラムは必須である。したがって、専門分野から乖離した形態や一般教養的な形態での初年次教育や導入教育に費せる時間はほとんどない。専門科目の効率的、効果的な修得が要求される。

3. 高度情報処理技術者の育成

情報系学科は「高度情報処理技術者」を育成すべきである。

社会が必要とする情報技術の専門家も単なるSEから「ITスペシャリスト」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジャ」「アプリケーションスペシャリスト」などと細分化されてきた。また、「マーケティング」「セールス」「コンサルタント」など開発者以外の職種の必要性も増加している。これらの多様なキャリアパスを選びうる人材を「高度情報処理技術者」と定義する。このレベルの人材に求められるのは「自主性」「コミュニケーション能力」である。

脚注1) 高度情報処理技術者とその育成

経済産業省人材育成ワーキンググループの報告書からの抜粋である。この図において、大学の情報系学部卒業者はレベル1ないし2に相当し、いわゆるプログラマや単なるSEということになる。本取組においては、この図におけるレベル4以上を目指す。

情報処理技術者のレベル

脚注2) 高度情報処理技術者の分類

表1は高度情報処理技術者の分類を示したものである。

表1. 高度情報処理技術者の分類

系統項目
ソリューション系ITアーキテクト
プロジェクトマネジメント
ITスペシャリスト
アプリケーションスペシャリスト
ソフトウェアデベロップメント
カスタマサービス
ITサービスマネジメント
基本戦略系マーケティング
セールス
コンサルタント
クリエーション系(クリエータ)
その他エデュケーション

脚注3) 高度情報処理技術者育成に必要なもの

高度情報処理技術者を育成するのには、

  1. 実務経験
  2. 専門基礎能力
    • プログラミング能力(現象のモデル化能力も含む)
  3. コンピテンシー
    • 自主性の涵養
    • コミュニケーション能力

の3つが不可欠であるといわれている。このうち、大学で対応可能な2, 3について本取組で取り扱う。

「情報科学」分野の知識は、大学入学までに学ぶ理系科目の知識にはあまり依存しておらず、学生にとっては積み上げのない状態での再スタートであるはずだが、新入生のプログラミング期末試験から見る限り、大学の知に不適応の学生の存在が明らかになった。詳しく分析した結果、「不適応」の学生は基本概念を「理解」するのではなく「暗記」しようとすることが分かった。これらのことから、専門基礎能力を育成するには、動機づけとともに知的態度・習慣の転換を促す指導が必要であることが分かった。

また、学生の書けない、話せない状況からもコミュニケーション能力の育成に力を入れることも非常に重要なことである。

取組の具体的な目的

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学生自身の課題を見つける力を育成できる教育システムを構築する

学部教育においてスキル・知識を身につける過程で、学生自身の課題を見つける力を育成できる教育システムを構築する。

たとえば、どの教科をどのように履修するかについて、学生が自分なりの課題とどのような関係にあるかを考えた上で判断できることを期待する。この取組では、「高度情報処理技術者」にとって最重要なスキルである「プログラミング」の修得を具体的に取り上げる。修得の過程で、コミュニケーション能力を向上させ、取組を実効的なものとするために、教員と学生、上級生と下級生のコミュニケーション機会を増加させるようにする。

言い換えれば、21世紀の産業界が求める高度情報処理技術者の育成が、情報系学部のミッションとなっており、高度情報処理技術者の育成には、実務経験のほかに、基礎専門能力の育成と自主性・コミュニケーション能力の育成が不可欠であるため、それらの育成を効果的に行う教育システムの構築が本取組の目的なのである。

取組の具体的内容

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1. プログラミング教育における仮想少人数クラスの実現

情報処理技術者にとって最重要スキルはプログラミングである。ほとんどの学生は大学ではじめてプログラミングを学ぶ。学生のやる気を喚起するためには、興味を持てる題材を選ぶことが重要である。学ぶ概念は同一であるが、学ぶための題材を細分化することで仮想的な少人数クラスを実現する。

現在、初年次のプログラミング入門は40名程度のクラスで実施している。この講義で取り上げる課題を「CG」「web」「サウンド」など 5つ程度のコースごとに用意する。この講義の形態を e-Learning システムとTAを活用することで、以下のように発展させる。

クラス人数は同一のままで、1コマ目では 45 分程度で共通する概念の説明をおこない、残りの45分はシステムでコースごとに必要な概念を学ぶ。2コマ目はコースごとに演習をおこなう。演習はコースごとに3 レベル程度の難易度にあわせた例題を豊富に準備し、学生は自分にあった難易度の演習に取り組めるようにする。このことにより、仮想的な少人数クラスの実現を目指す。

この取り組みにより、プログラミングへの興味を喚起するだけでなく、各自が興味を持つ分野に関連する基礎科目への取り組む意欲の向上も目指す。

実施にあたっては、ICT により、自動採点や、学生ごとの演習進度の管理などを合理化することで仮想少人数クラス化を実現する。また、演習時間以外にもインターネットを通して演習に取り組める環境を用意することで、学生の自習を促進する。

2. ガラス箱オフィスアワーセンターの設置

学生と教員、上級生と下級生のコミュニケーション機会を増加させるため、実空間でも仮想空間でも透明度の高いガラス箱オフィスアワーセンター(GBC)を設置する。GBCは、学生の「相談しにくい」「機会がない」との理由による教員とのコミュニケーションへの不満を解消するための方策である。

GBCは、ガラス張りの壁面を多用し、中が簡単に覗けるようにし、入りやすい環境を実現する。また、学生ラウンジに隣接する場所に設置する。室内には、コンピュータなどを設置し、高度な課題にも対応できるようにする。

運営では、学生の利便性を考慮し、昼休みとその前後の1~2コマに GBC を開室する。教員は毎週のオフィスアワー2コマのうち、1コマは GBC に在室することを義務とする。また、昼休みも交代で最低1名の教員は在室するようにする。また学部生、大学院生、非常勤職員からなるスタッフも常時数名在室できるよう配置する。

この GBC では、学習に関するあらゆる質問に答えるようにし、そこで対面でおこなわれたやりとりを GBC-FAQ としてまとめ、インターネットで学部内向けに公開する。このことで、仮想空間でも透明度を高め、学生が訪れやすくする。

また、TA/SA/職員や教員によって、e-Learning に取り組む学生のメンタリングをおこなうことにより、自主学習を促進させる。

3. 情報科学リテラシ科目の新設

様々な情報をコンピュータで扱うためには、何らかの形で記号化(コード化)する必要がある。幅広い現象を記号化する方法の一つが言葉を用いた論理的な方法である。これに関連する、情報収集力、整理力、発想力の基盤となる能力を「情報科学リテラシ」として身につける。具体的には、文献を分析的、批評的に読む力、論理的な文章作成能力、問題分析能力、レポート制作能力、図やグラフの作図能力等を修得させる。

この科目は、1,2年次に実施する3科目で構成する。

  • 情報科学リテラシI – 日本語の文章を批評的、分析的に読み、それに対する見解を文章にまとめられるスキルを身に付ける。
  • 情報科学リテラシII – 英文の専門的な文章を対象に、数式、グラフや表、参考文献を含めて批評的、分析的に読むスキルを身に付ける。
  • 情報科学リテラシIII – コンピュータの世界の外(物理世界、人間社会の世界)の問題を分析、定式化し、それを解決するスキルを身に付ける。

4. リクエスト集中講義の開講

プログラミングには基礎的スキルという面だけでなく、最先端の技術を実現するスキルという側面も重要である。最先端の技術を実現するには、最先端のプログラミング言語やプログラミング環境が必要になることが多い。しかし、その変化が激しすぎ、固定的なカリキュラムに組み入れるのは困難である。

そのような最新のプログラミング技術は、長期休暇中の集中講義形式で身に付けるのが最良である。そこで、本事業の一環として、夏季・春季休暇に各 2 ~ 3 教科 (計 年10 単位程度)集中講義を実施する。この集中講義で、C# や python、Ajax 技術など、最新かつ通常講義ではカバーしにくい技術を取り上げることを想定する。取り上げる題材は、学生の希望や提案を反映させる仕組を構築する。

5. 「1万行演習」の新設

プログラミング言語の運用能力(読み書きする力)を向上させるためには、たくさんのプログラムを読み書きするのが近道である。そのプロセスは、外国語の能力を向上させるプロセスに類似している。

そのようなプログラムとしては、ひとまとまりでは 千行以上が望ましい。また、いっぱしのプログラミングスキルを身につけるためには、総経験として 1万行以上は書くことが望ましい。

これらを実現するため、従来の科目を整理し、科目横断的、より実践的な実習科目に発展させる。30名程度の少人数クラスを組織し、1ヶ月間をかけた千行強の中規模のプログラムを3種類書かせるような演習を実施する。

この科目は、1年生から3年生までに配置された、3つの必修科目「プログラミング実習I」「プログラミング実習II」「コンピュータ科学実習/ディジタルメディア実習」で構成する。この 3 教科で総計 1万行程度のプログラムを書かせることで、実践的なプログラミング能力を身に付けさせる。この規模の経験によって、実社会では重要なのに、座学に終始せざるをえなかったソフトウェア工学などの実践的科目も実質的なものとして捉えられるようになる。

6. プロジェクト担任教員によるポートフォリオ評価

個々の学生が「やりたいこと」を明示的に設定し、それに向かう成長過程を明らかにするためにポートフォリオを全学生に作成させる。それを評価する責任者としては、学生が所属している「プロジェクト」科目の担当教員を充てる。「プロジェクト」を履修していない学生については学科主任が代わりの教員を指名する。

7. 専門スキルに関する情報提供

学生が「やりたいこと」を自ら見つけるためには、情報科学分野の全体像を把握し道標となる多様な情報に接する機会が必要である。以下の3方策で情報を提供する。

キャリアデザイン講義の実施

IT技術者として活躍しているOBを講師として迎え、取り組んでいる業務と大学で学べること、学ぶべきことの関係を提供する。

「情報科学入門」講義の実施

専任教員が各々の専門領域に軸に、どのような科目を履修すればよいのかなど、どのように学習してゆけばよいのかの指針を与える講義を1年生の春学期に実施する。

知識体系にもとづく教科マップの作成

情報系のカリキュラム標準である J07 においては、知識体系を表す BOK ユニットという考え方が導入されている。このBOKを拡張した体系を用いて、専門領域における教科の位置づけが一目でわかるようにする。

取組の相互関係性

取組の具体的内容で述べた取組は、それぞれが互いに関係しあっているので、主なものを以下に列挙する。

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カリキュラム改革と新カリキュラムの特徴

カリキュラム改革と新カリキュラムの特徴

現行のカリキュラムはJ97に準拠して策定されたが、

  • モデル履修コースを設定し、
  • 初年度からプログラミング教育を行う

ことで、プログラミングスキル育成部分を独自に強化してきた。

新カリキュラムはJ07に準拠して策定中

  • J07では知識体系のみが設定されており、
  • 大学が独自にカリキュラムを策定できる
  • 独自のカリキュラムで演習を充実徹底させるよう工夫
    • 必修科目において従来の5倍の量のプログラムを書かせる

プログラミングスキルの育成

プログラミングスキルの育成

コミュニケーション力の育成

  • ガラス箱オフィスアワーセンター
    • 従来から全教員が実施しているオフィスアワーを活性化
    • 教員/職員/SA/TAを常駐
    • 質問の機会に学生自身の「自分が知らないこと」を自覚させる
  • 「情報科学リテラシ科目」の新設
    • 文献を分析的、批判的に読む力
    • 論理的な文章作成能力
    • 問題分析能力
    • レポート制作能力
    • 図やグラフの作図能力
    • 専門的な事柄のコミュニケーション能力の基礎

などの習得

ポートフォリオ

ポートフォリオ

プロジェクト科目の発展

  • 問題発掘・解決型の人材育成のために独自に設置
  • 卒業研究のゼミに準じる形態・内容
  • 1年春から3年秋まで全てのセメスタに設置
  • 全教員が担当
    • 教員当たり平均20名の学生を担当
      • 少人数教育
  • 専門的な知識の獲得、先端分野でのプログラミング経験が1年生から可能
  • 履修率85%
  • 今後、自主性・コミュニケーション力の養成にも力点をおく

取組の評価体制

本取組においては、以下に挙げる3つの委員会による評価体制をとる。

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1. 評価運営委員会の設置

専任教員3名による評価運営委員会を設置し、取組毎に評価項目を明確に設定した上で進捗管理などの自己点検を行う。評価運営委員会は、全学生に作成させるポートフォリオについて評価責任者である「プロジェクト」科目の担当教員から評価報告書を提出させ、とりまとめを行って自己点検の結果とともに教授会に報告する。さらに、教授会の議論を経て改善点等を提案し、次年度取組計画に加える形でPDCAサイクルを完成させる。

2. 外部評価委員会の設置

2,3 名程度の外部評価委員会を設置し、定期的に会合を行い、事業の方向性、有効性を検証してもらう。評価運営委員会と教授会とによるPDCAサイクルにおいて、外部の目を入れることによって評価の客観性を保ち、事業が誤った方向に向かうことを防止する。これにより、PDCAサイクルを効果的に回すことができ、学生の立場からも有効な事業が行われる。

3. 調査委員会の設置

専任教員3名による調査委員会を設置する。委員は評価運営委員会委員が兼ねてもよいものとする。本取組に関連する他大学や他国の情勢を調査し、共通する問題点や個々の取組における工夫などを整理して新たな事業を提案することを目的として活動する。

また、取組の達成度の評価は以下の3つ方法で行う。

1. 学生側からの主観的評価

ポートフォリオ作成に連動して定期的にアンケートを行い、各人の達成度や改善案などについて、学生自身による自主的な評価を行う。アンケートの設問には満足度(5段階評価)の項目を含める。これを数値化することによって年度ごとの比較を行う。

2. 教員側からの自己点検評価

担当する学生のポートフォリオとアンケート結果を取りまとめ、それに基づいて、点検項目に対する評価を行い、教授会に報告し、学部で情報を共有する。評価結果を次の計画に反映させる。

3. 客観的な指標による評価

学生がどの程度の力を獲得したかを直接的に評価する方法として、米国の大学院入学希望者が受験しなければならないGRE (Graduation Record Examination)の利用を検討する。Computer Scienceの過去問が出版されているので、そのままか加工して用いる。個人の成長の指標として使うほか、統計的な処理をして年度ごとの比較なども行う。このほか、大学院進学者数やプロジェクト受講率なども指標として用いる。こうした指標は、評価運営委員会がとりまとめを行い、教授会に報告する。評価結果は公表し、次の事業計画に反映させる。

評価運営委員会が各評価結果をとりまとめ、教授会に報告する。併せて、外部評価委員会と調査委員会とからのコメントや提言もとりまとめの上教授会に次期活動計画案として提案する。教授会の議論を経て次の取組の事業計画に反映させる。これらの情報はその都度ホームページ上で公表する。

取組期間終了後は取組の総括を行って理事会に報告し、評価結果を全学的に共有化した上で、取組の全学展開を行うものとする。

評価体制

評価運営委員会による達成度の評価

  • 学生側からの主観評価
  • 教員側からの自己点検評価
  • 客観的な指標GREによる評価

GREを用いる点検評価

  • GRE(Graduate Record Examination):アメリカ合衆国やカナダの通常の大学院へ進学するのに必要な共通試験
  1. グローバルな視点からの評価が可能であること
  2. 評価基準として明確であること
  3. 学部全体のスキル習得状況の経年比較も可能であること

などの理由によりGREによる評価を取り入れた。

実施計画

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平成21年度

  1. プログラミング教育における仮想少人数クラスの実現を目指し、平成22年度カリキュラム改革を進める。ICTの利用を現行カリキュラムのもとで最大限に取り入れる。具体的には、オンラインでの小テスト実施、到達度の評価や出席管理情報の個人による閲覧をシステム化し、22年度以降の本格導入に備える。5コースからなる初年次プログラミング教育のためのパイロット教材開発を行う。また、本システムによる教育効果の検証方法を検討する。
  2. GBC(ガラス箱オフィスアワーセンター)の設置場所を確保する。現在試行中のキャンパス再開発事業と整合するよう工事計画を作成する。
  3. 情報科学リテラシI,II,IIIのコース設計を平成22年度カリキュラム改革と並行して進める。これらの科目のパイロットケースを数理リテラシという科目で実施する。また、教育効果の評価方法を検討する。
  4. リクエスト集中講義のコース設計を平成22年度カリキュラム改革と並行して進める。教育効果の評価方法を検討する。
  5. 「1万行演習」の3つの必修科目「プログラミング実習I」「プログラミング実習II」「コンピュータ科学実習/ディジタルメディア実習」のコース設計を平成22年度カリキュラム改革と並行して進める。教育効果の評価方法を検討する。
  6. ポートフォリオの入力フォームを作業チームを設けて検討する。
  7. 専門スキルに関する情報提供を実施する。OBによる講演会を行う。「情報科学入門」講義をオムニバス形式で実施する。22年度カリキュラム改革の成果物として、知識体系にもとづく教科マップを作成する。

平成22年度

  1. 新カリキュラムの下で、5コースからなる初年次プログラミング教育を実施する。平成21年度に開発したパイロット教材を手本に、各コースの教材開発を授業と並行して行う。21年度に策定した評価項目、基準により、学期末に、本システムによる教育効果の評価を行う。
  2. GBCの運用を開始する。学生の相談内容と対応例のデータを収集する。具体的には、対応者(教員,TA,SA,臨床心理士)は相談1件ごとに、オンラインで簡易な報告を入力する。
  3. 新カリキュラムの下で、3コースからなる情報科学リテラシ教育を実施する。平成21年度に21年度に策定した評価項目、基準により、学期末に、本システムによる教育効果の評価を行う。
  4. リクエスト集中講義を、C言語、C#、Ruby、Python、Haskell、Ajaxで実施する。21年度の作成された評価項目で教育効果の達成度を評価する。
  5. 「1万行演習」の3つの必修科目「プログラミング実習I」「プログラミング実習II」「コンピュータ科学実習/ディジタルメディア実習」を実施し、21年度の作成された評価項目で教育効果の達成度を評価する。
  6. ポートフォリオ作成指導を実施する。指導の成果の評価方法を検討する。
  7. 専門スキルに関する情報提供を行い、キャリア教育としての有効性の評価方法を検討する。複数業種からOBを招き、講演会を行う。「情報科学入門」において各教員は教科マップに基づき、各研究分野に向かう履修動機付けを行う。知識体系にもとづく教科マップが適切であるか評価し、必要があれば改訂を行う。
  8. 以上のすべての取り組みに対して外部評価を実施する。

平成23年度

  1. 22年度の本システムの評価に基づき、教材の改良、人員配置の適正化、必要があれば5コースの見直しを行う。22年度に引き続き、5コースからなる初年次プログラミング教育用の教材開発を行う。23年度からは、本システムによる教育の安定運用と教材の拡充を継続して行う。
  2. 蓄積された学生の相談内容と対応例のデータを分析し、共通する問題と対応例を参照しやすくまとめて学生向けに公開する。対応者の研修にも利用するため、対応の結果の成功あるいは失敗例の分析も行う。
  3. 22年度の情報科学リテラシ教育の評価に基づき、教材の改良、人員配置の適正化、必要があれば3コースの見直しを行う。平成21年度に21年度に策定した評価項目、基準により、学期末に、本システムによる教育効果の評価を行う。
  4. 22年度のリクエスト授業の評価に基づき、教材の改良、人員配置の適正化、必要があれば実施コースの見直しを行う。21年度の作成された評価項目で教育効果の達成度を評価する。
  5. 22年度の「1万行演習」の評価に基づき、教材の改良、人員配置の適正化、必要があれば実施コースの見直しを行う。21年度の作成された評価項目で教育効果の達成度を評価する。
  6. ポートフォリオ作成の指導を22年度と同様に行い、指導の有効性の評価を行う。
  7. 専門スキルに関する情報提供を22年度と同様に行い、その有効性の評価を行う。複数業種からOBを招き、講演会を行い、キャリア教育に有効か評価を行う。「情報科学入門」において各教員は教科マップに基づき、各研究分野に向かう履修動機付けを行う。知識体系にもとづく教科マップが適切であるか評価し、必要があれば改訂を行う。
  8. 以上のすべての取り組みに対して外部評価を実施する。

以上をまとめて表にしたものを以下に示す。

実施計画

データや資料

以下は、申請に際してのデータや資料である。ご参照いただければ幸いである。

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1. ITスキル標準

ITスキル標準は、情報処理推進機構ITスキル標準センターにより、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標である。産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするものである。

このスキルではレベルが定義されている。レベルは、当該職種/専門分野においてプロフェッショナルとして価値を創出するために必要なスキルの度合いを表現しています。また、キャリアパスを明確にするために、7段階のレベルを設けています。 最も高いレベルはレベル7で、「世界で通用するプレーヤ」とされている。

本取組では、このITスキル標準のレベル4を育成すべき人材のレベルとしている。レベル4の説明を以下に引用する。

「プロフェッショナルとしてスキルの専門分野が確立し、自らのスキルを活用することによって、独力で業務上の課題の発見と解決をリードするレベル。社内において、プロフェッショナルとして求められる経験の知識化とその応用(後進育成)に貢献しており、ハイレベルのプレーヤとして認められます。スキル開発においても自らのスキルの研鑽を継続することが求められます。」

参考資料

2. IT人材市場動向予備調査

「IT人材市場動向予備調査」は、情報処理推進機構が実施している調査である。IT企業などに対しアンケート調査を行い、現状におけるIT技術者の偏在状況を調査し、IT技術者の過不足とオフショアの状況を把握し報告したものである。

2007年度の調査によると、情報系学部の年間の卒業生は約15000人であると推定される

参考資料

3. 特定サービス産業実態調査

特定サービス産業実態調査は経済産業省が実施している調査である。各種サービス産業のうち、行政、経済両面において統計ニーズの高い特定サービス産業の活動状況及び事業経営の現状を調査し、サービス産業の企画・経営及び行政施策の立案に必要な基礎データを得ることを目的としている。

この調査によると、ソフトウェア業/情報処理サービス業の業務従事者数は約70万人である。

参考資料

4. 情報専門学科カリキュラムJ07

情報処理学会が策定した情報専門教育の標準カリキュラムである。コンピュータ科学,情報システム,ソフトウェアエンジニアリング,コンピュータエンジニアリング,インフォメーションテクノロジの各領域について,それぞれの目標とする人材像と,知識体系を規定している。

参考資料

5. 「プロジェクト」科目

「プロジェクト」科目は、問題発掘・解決型の人材を育成するための情報科学部独自の科目として設置されている。この科目は、1年時から通常の理系学部では4年次に実施されるゼミと同様の形態で、各教員や先輩と一緒に最先端の研究分野に触れることができる科目として運営されている。この科目は専任教員全員が実施している。2009年度の履修状況は次の通りである。

表3. 2009年度のプロジェクト履修状況

学年履修者数(名)履修率(%)
1年生14791.9
2年生15574.2
3年生16787.4

年によって履修率は上下するが、1年生は多く履修し、2年生では減少するものの、3年生では、卒業研究に向けて増加するという傾向は、年にかかわらず共通である。

6. 学生生活実態調査結果

法政大学では、「学生生活実態調査」を実施している。この調査では、全学部生の中から無作為に抽出した10,000人(在学生約3人に1人の割合)に、案内を郵送し実施している。調査目的は、本学学生の学生生活の実態を把握することにより、教学環境の改善を図り、学生の皆さんの多様なニーズに応えるための基礎資料として活用するものである。

この調査に「教員とのコミュニケーションに満足していますか?」との設問がある。情報科学部学生の回答は「満足している」が41.9%、「満足していない」が51.6% であった(全学平均とほぼ同等)。さらに「満足していない」との回答者に対して複数選択可能な設問として「不満な点は何ですか?」との設問がある。この回答では、「相談しにくい」が70.8%、「機会がない」が64.6%、「どこで教員と話せるのかわからない」が41.7%、「質問に答えてくれない」が12.5%、「オフィスアワーがない」が8.3%となっている。

情報科学部では、全教員が週2コマオフィスアワーを実施することにしている。「オフィスアワーがない」という回答が8.3%しかないことから、オフィスアワーはほとんどの学生に認知されていることがわかる。ただし、現行のオフィスアワーでは、相談しにくい、時間が合わない、などの問題があることがわかる。

大学教育・学生支援推進事業とは

各大学・短期大学・高等専門学校から申請された、各大学等における学士力の確保や教育力向上のための取組の中から、達成目標を明確にした効果が見込まれる取組を選定し、広く社会に情報提供するとともに、重点的な財政支援を行うことにより、我が国の高等教育の質保証の強化に資することを目的としています。